伊勢物語 第6段 芥川 現代仮名遣い
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「伊勢物語」 第6段 「芥川」の全文・「ひらがな」の「歴的仮名遣い」と「現代仮名遣い」です。現代仮名遣い（表記）＝青色表示【】内に記載。
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伊勢物語 芥川
作者＝「未詳」 ジャンル＝「歌物語」 成立＝「平安時代中期」
◆昔、男ありけり。女のえ得まじかりけるを、年を経て呼ばひわたりけるを、からうじて盗み出でて、いと暗きに来けり。
昔（むかし）
男（をとこ） → 【おとこ】
あり
けり
女（をんな） → 【おんな】
の
え
得（う）
まじかり
ける
を
年（とし）
を
経（へ）
て
よばひわたり → 【よばいわたり】
ける
を
からうじて → 【かろうじて】《カロージテ》
盗み出で（ぬすみいで）
て
いと
暗き（くらき）
に
来（き）
けり
◆芥川といふ河を率て行きければ、草の上に置きたりける露を、「かれは何ぞ」となむ男に問ひける。
芥川（あくたがは） → 【あくたがわ】
と
いふ → 【いう】《ユー》
河（かは） → 【かわ】
を
率（ゐ） → 【い】
て
行き（いき）
けれ
ば
草（くさ）
の
上（うへ） → 【うえ】
に
置き（おき）
たり
ける
露（つゆ）
を
かれ
は
何（なに）
ぞ
と
なむ → 【なん】
男（をとこ） → 【おとこ】
に
問ひ（とひ） → 【とい】
ける
◆行く先多く、夜もふけにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓、やなぐひを負ひて戸口にをり。
行く先（ゆくさき）
多く（おほく） → 【おおく】
夜（よ）
も
ふけ
に
けれ
ば
鬼（おに）
ある
所（ところ）
と
も
知ら（しら）
で
神（かみ）
さへ → 【さえ】
いと
いみじう → 【いみじゅう】《イミジュー》
鳴り（なり）
雨（あめ）
も
いたう → 【いとう】《イトー》
降り（ふり）
けれ
ば
あばらなる
蔵（くら）
に
女（をんな） → 【おんな】
を
ば
奥（おく）
に
押し入れ（おしいれ）
て
男（をとこ） → 【おとこ】
弓（ゆみ）
やなぐひ → 【やなぐい】
を
負ひ（おひ） → 【おい】
て
戸口（とぐち）
に
をり → 【おり】
◆はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼、はや一口に食ひてけり。
はや
夜（よ）
も
明け（あけ）
なむ → 【なん】
と
思ひ（おもひ） → 【おもい】
つつ
ゐ → 【い】
たり
ける
に
鬼（おに）
はや
一口（ひとくち）
に
食ひ（くひ） → 【くい】
て
けり
◆「あなや」と言ひけれど、神鳴る騒ぎにえ聞かざりけり。
あなや
と
言ひ → 【いい】
けれ
ど
神（かみ）
鳴る（なる）
騒ぎ（さわぎ）
に
え
聞か（きか）
ざり
けり
◆やうやう夜も明けゆくに、見れば率て来し女もなし。
やうやう → 【ようよう】《ヨーヨー》
夜（よ）
も
明けゆく（あけゆく）
に
見れ（みれ）
ば
率（ゐ） → 【い】
て
来（こ）
し
女（をんな） → 【おんな】
も
なし
◆足ずりをして泣けどもかひなし。
足ずり（あしずり）
を
し
て
泣け
ども
かひなし → 【かいなし】
◆白玉かなにぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを
白玉（しらたま）
か
なに
ぞ
と
人（ひと）
の
問ひ（とひ） → 【とい】
し
時（とき）
露（つゆ）
と
答へ（こたへ） → 【こたえ】
て
消え（きえ）
な
まし
ものを
◆これは、二条の后のいとこの女御の御もとに、仕うまつるやうにてゐ給へりけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひて出でたりけるを、御兄、堀河の大臣、太郎国経の大納言、まだ下臈にて、内に参り給ふに、いみじう泣く人のあるを聞きつけて、とどめてとりかへし給うてけり。
これ
は
二条の后（にでうのきさき） → 【にじょうのきさき】《ニジョーノキサキ》
の
いとこ
の
女御（にようご） → 【にょうご】《ニョーゴ》
の
御もと（おんもと）
に
仕うまつる（つかうまつる） → 【つこうまつる】《ツコーマツル》
やうに → 【ように】《ヨーニ》
て
ゐ → 【い】
給へ（たまへ） → 【たまえ】
り
ける
を
かたち
の
いと
めでたく
おはし → 【おわし】
けれ
ば
盗み（ぬすみ）
て
負ひ（おひ） → 【おい】
て
いで
たり
ける
を
御兄人（おほんせうと） → 【おおんしょうと】《オオンショート》
堀河の大臣（ほりかはのおとど） → 【ほりかわのおとど】
太郎国経の大納言（たらうくにつねのだいなごん） → 【たろうくにつねのだいなごん】《タロークニツネノダイナゴン》
まだ
下臈（げらふ） → 【げろう】《ゲロー》
に
て
内（うち）
へ
参り（まゐり） → 【まいり】
給ふ（たまふ） → 【たまう】《タモー》
に
いみじう → 【いみじゅう】《イミジュー》
泣く（なく）
人（ひと）
ある
を
聞きつけ（ききつけ）
て
とどめ
て
とりかへし → 【とりかえし】
給う（たまう） → 【たもう】《タモー》
て
けり
◆それを、かく鬼とはいふなりけり。まだいと若うて、后のただにおはしける時とや。
それ
を
かく
鬼（おに）
と
は
いふ → 【いう】《ユー》
なり
けり
まだ
いと
若う（わかう） → 【わこう】《ワコー》
て
后（きさき）
の
ただに
おはし → 【おわし】
ける
時（とき）
と
や
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芥川（あくたがは） → 【あくたがわ】
と
いふ → 【いう】《ユー》
河（かは） → 【かわ】
を
率（ゐ） → 【い】
て
行き（いき）
けれ
ば
草（くさ）
の
上（うへ） → 【うえ】
に
置き（おき）
たり
ける
露（つゆ）
を
かれ
は
何（なに）
ぞ
と
なむ → 【なん】
男（をとこ） → 【おとこ】
に
問ひ（とひ） → 【とい】
ける
◆行く先多く、夜もふけにければ、鬼ある所とも知らで、神さへいといみじう鳴り、雨もいたう降りければ、あばらなる蔵に、女をば奥に押し入れて、男、弓、やなぐひを負ひて戸口にをり。
行く先（ゆくさき）
多く（おほく） → 【おおく】
夜（よ）
も
ふけ
に
けれ
ば
鬼（おに）
ある
所（ところ）
と
も
知ら（しら）
で
神（かみ）
さへ → 【さえ】
いと
いみじう → 【いみじゅう】《イミジュー》
鳴り（なり）
雨（あめ）
も
いたう → 【いとう】《イトー》
降り（ふり）
けれ
ば
あばらなる
蔵（くら）
に
女（をんな） → 【おんな】
を
ば
奥（おく）
に
押し入れ（おしいれ）
て
男（をとこ） → 【おとこ】
弓（ゆみ）
やなぐひ → 【やなぐい】
を
負ひ（おひ） → 【おい】
て
戸口（とぐち）
に
をり → 【おり】
◆はや夜も明けなむと思ひつつゐたりけるに、鬼、はや一口に食ひてけり。
はや
夜（よ）
も
明け（あけ）
なむ → 【なん】
と
思ひ（おもひ） → 【おもい】
つつ
ゐ → 【い】
たり
ける
に
鬼（おに）
はや
一口（ひとくち）
に
食ひ（くひ） → 【くい】
て
けり
◆「あなや」と言ひけれど、神鳴る騒ぎにえ聞かざりけり。
あなや
と
言ひ → 【いい】
けれ
ど
神（かみ）
鳴る（なる）
騒ぎ（さわぎ）
に
え
聞か（きか）
ざり
けり
◆やうやう夜も明けゆくに、見れば率て来し女もなし。
やうやう → 【ようよう】《ヨーヨー》
夜（よ）
も
明けゆく（あけゆく）
に
見れ（みれ）
ば
率（ゐ） → 【い】
て
来（こ）
し
女（をんな） → 【おんな】
も
なし
◆足ずりをして泣けどもかひなし。
足ずり（あしずり）
を
し
て
泣け
ども
かひなし → 【かいなし】
◆白玉かなにぞと人の問ひし時露と答へて消えなましものを
白玉（しらたま）
か
なに
ぞ
と
人（ひと）
の
問ひ（とひ） → 【とい】
し
時（とき）
露（つゆ）
と
答へ（こたへ） → 【こたえ】
て
消え（きえ）
な
まし
ものを
◆これは、二条の后のいとこの女御の御もとに、仕うまつるやうにてゐ給へりけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひて出でたりけるを、御兄、堀河の大臣、太郎国経の大納言、まだ下臈にて、内に参り給ふに、いみじう泣く人のあるを聞きつけて、とどめてとりかへし給うてけり。
これ
は
二条の后（にでうのきさき） → 【にじょうのきさき】《ニジョーノキサキ》
の
いとこ
の
女御（にようご） → 【にょうご】《ニョーゴ》
の
御もと（おんもと）
に
仕うまつる（つかうまつる） → 【つこうまつる】《ツコーマツル》
やうに → 【ように】《ヨーニ》
て
ゐ → 【い】
給へ（たまへ） → 【たまえ】
り
ける
を
かたち
の
いと
めでたく
おはし → 【おわし】
けれ
ば
盗み（ぬすみ）
て
負ひ（おひ） → 【おい】
て
いで
たり
ける
を
御兄人（おほんせうと） → 【おおんしょうと】《オオンショート》
堀河の大臣（ほりかはのおとど） → 【ほりかわのおとど】
太郎国経の大納言（たらうくにつねのだいなごん） → 【たろうくにつねのだいなごん】《タロークニツネノダイナゴン》
まだ
下臈（げらふ） → 【げろう】《ゲロー》
に
て
内（うち）
へ
参り（まゐり） → 【まいり】
給ふ（たまふ） → 【たまう】《タモー》
に
いみじう → 【いみじゅう】《イミジュー》
泣く（なく）
人（ひと）
ある
を
聞きつけ（ききつけ）
て
とどめ
て
とりかへし → 【とりかえし】
給う（たまう） → 【たもう】《タモー》
て
けり
◆それを、かく鬼とはいふなりけり。まだいと若うて、后のただにおはしける時とや。
それ
を
かく
鬼（おに）
と
は
いふ → 【いう】《ユー》
なり
けり
まだ
いと
若う（わかう） → 【わこう】《ワコー》
て
后（きさき）
の
ただに
おはし → 【おわし】
ける
時（とき）
と
や
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